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【感想】漫画「マイ・ブロークン・マリコ」【後半ネタバレあり】

人と視点によって全く見え方の違うキャラクター像

この作品を語っておいてこんなことを言うのもどうかと思うのですが、

私はシイナやマキオの気持ちには共感できたのですが、

マリコや、マリコ父にはほとんど共感できませんでした

特にマリコ父が終ぞ一ミリも理解できませんでした。

そもそも彼がなぜ娘にあんな酷いことができたのか。

そして娘を自殺させるに至った張本人とも言える人物が、

なぜ娘の死後あんなに娘を弔ったり、涙を流せたのか。

それがわからないのは、私が暴力のない比較的穏やかな家庭で育ったからに他ならないと思います。

きっと暴力を振るわれていた人、振るっていた人には彼らが違って見えるんだと思います。

そしてシイナやマキオの見え方も私とは違う様に見えているんだと思います。

残酷なことを言ってしまうと、シイナはマリコの為にいままで手を尽くしましたが、結局マリコを救えませんでした。

それはマリコが本当に望んでいたことをシイナはしてあげられなかったからなのかなあと。

それとも死ぬことでしかマリコは望みを叶えられなかったのでしょうか。

シイナの子供に生まれ変わりたいとマリコが零していた描写がありましたが、

彼女が自殺に至った真意まではわかりません。

その事実が余計にシイナを苦しめていた様に思います。

そして物語の最後に出てきたマリコからシイナへ綴った手紙の内容

手紙の内容は作中で明かされていませんが、

これも本作を読んでる人の視点、立場、境遇によって全く違った内容を思い浮かべると思います。

本作は核心部分に迫る内容をあえてぼかして描いています。

それは、読者に作中の人物の気持ちと想いを自分の頭で考えてほしいからではないでしょうか。

私は先ほどマリコ父の気持ちがわからないと言いましたが、これを機に少しDVについて調べました。

すると、DVをする人は自分に対する被害者意識を持っており、

そもそも自分がDVをしているとすら分かっていない人が多いと書いてあり、驚愕しました。

きっと相手は愚か、自分のこともよくわかっていないのです。

そして、そのわからない事をわからないで済ませて考えないからDVに繋がるのでは?と私は思いました。

だからこそ、本作を通して登場人物の気持ちを考え、

自分や相手の分からないことを減らしていくことは、

DVを減らすきっかけの一つになるのではないかと思いました。

まあそうはいっても他人も自分も心の中を全部を知るのは不可能ですからね。

あまり深刻に悩みすぎるのもどうかと思うので、

考えてもわからない部分は人と話し合ったり、思いやりで何とかカバーしたいところです。

心に分からない部分がある以上、自分本位になってしまえば、

誰しもDVを働いてしまう可能性はあるという事を知ったことだけでも

本作を読んだ価値は十分にあったと思いました。

前半と後半で違って見えるマリコ

物語前半ではシイナがマリコのかわいそうだと思った部分、優しくてきれいなところが描かれていました。

しかし、物語後半になるにつれ、シイナがめんどくさかったり、嫌だった部分のマリコが描かれています。

シイナに彼氏が出来たら私死ぬからと言い放ちながらリストカットしたり、

DV彼氏からシイナが守って追い払ったにも関わらず、自分からその彼氏の元に行って骨を折られたり…

マリコにとって壮絶な人生こそが普通でした。そんな経験をしすぎて感覚が壊れてしまったのです。

それでもシイナはきれいなあの子しか思い出さなくなると居酒屋で嘆いていました

シイナは、そんな歪んでしまった部分も含めてマリコの事を本当に大切に思っていたのでしょう。

事実として本当にいままでシイナは彼氏を作っていなかったような描写がされていました。

マリコを自分の手で幸せにすることが、シイナの生きがいになっていたのだと思います。

それにしても平庫先生はキャラの印象の転換が天才的ですね。

初登場と終盤でキャラクターにこれだけ真逆のイメージを持たせることは

なかなかできない事だと思います。

どこまでも等身大のシイナ

本作においてシイナのかっこいいシーンとかはほぼ皆無でした。

マリコからあらゆる悪い男を跳ね除けてきたシイナですが、

別に彼女が体術とかで強いわけではないです。本当に普通の女性です。

マリコを守る一心のみで、本人だっていつもボロボロになっていました。

マリコが死んでからもシイナは取り乱ながら遺骨を奪ったり、

居酒屋で泣きながら意味不明なことを叫び散らしたり、

どこまでも等身大で脆く弱い人間でした。

そんな弱い普通の一般人が親友の死後も何ができるか探し、

最後には少しだけ救いを見つけることが出来た姿に勇気づけられた方も多いと思います。

悲しみからどう立ち直るか

私は、本作にとってDVに関する表現と同じくらい大きなキーワードがこれだと感じました。

ただ、これに作中で言及したのはマキオだけです。

「もういない人に会うには自分が生きているしかないんじゃないでしょうか…」

「あなたの思い出の中の大事な人と あなた自身を大事にしてください」

結局何とかして生きるしかないということでしょう。

端的に言えば根性論ですw

しかし、それだけでは立ち直れないことほど悲しいことも多いのが現実です。

だからシイナは自分で行動に移したんだと思います。

シイナはマリコのためとは言っていましたが、

これからも何だかんだ生きていかなければならないのはシイナ自身です。

亡くなったマリコに最後に何かしてあげることで、自身の心の整理もつけなければならない

そのために旅に出たところもあったと思います。

しかし、何をするべきかは分かっていなかったですがね。

それでも最後、痴漢に追われていた女の子をマリコに重ね、

彼女を助け、そのはずみで零れた遺骨をまりがおか岬に撒き、自身も海にダイブしたことで

少し吹っ切れたように見えました。

一度吹っ切れてしまえば生きていくことだけは容易でしょう。

そして家に届いたマリコからの最後の手紙

先述の通り内容は明かされていませんが、

きっとこれからシイナが前を向いて生きていく理由になるものだったと信じています。

マイ・ブロークン・マリコ を読み終えて

骨太なストーリーの短編漫画をいままであまり読んだことが無くて新鮮でした。

1巻だけなので、読み返しもしやすいし、セリフ回しもよくて、言葉が頭に入ってきやすかったです。

それにしても自分の大切な人が明日も目の前にいる保証なんてないんだろうなあと。

後悔する前にそういう人たちに少しでも優しくしてみようと思いました。

今回は「マイ・ブロークン・マリコ」の感想でした!それではまた!

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